太田胃散
太田胃散

スプーン通信

「和のこころとからだ」

第二回目『食と禅から考える現代人の健康とは』

Q1:最初に退蔵院の歴史を少しお教えくださいませんか?

松山氏)退蔵院は、1404年に妙心寺の第三代目の和尚様によって建てられたものです。17世紀初頭には、宮本武蔵が修行をしていたと聞いています。現存する本堂は1597年に建立されたものです。
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Q2:「食と禅から考える現代人」についてお話をいただけませんでしょうか?

髙橋氏)先日、松山さんと精進料理のイベントを行いましたが、料理人とお寺さんとのコラボはお客様から大変高い評価をいただきました。時代と共にお客様が求めていらっしゃるものも変わってきている様子が感じられ、とてもよい機会でした。
ここ数年は料理の技術的なことよりもサプライズ的なことが多いように思いますが、サプライズ感はその時だけで忘れられていくように思います。最近はまた様子が変わり、哲学的なもの禅の思想などを求められているようなそんな感じもしています。

松山氏)最近、当方にも外国の料理人さん達が来られています。ただ単に美味しさだけを求めていないそんな印象を受けますね。
よく海外の人から、おもてなしとサービスはどう違うのかと質問をされます。明らかに違います。サービスは主従関係があります。おもてなしは主と客が同一でありお互いをリスペクトしないと成り立ちません。それが一番の違いだと思います。食べることも同じだと思います。食べる側も敬意を払いながら食さないといいお食事はできません。それが精進です。
美味しいものをお作りいただくことも大事ですが、私はそれをいただく側もマナーが必要ではないかと思います。現代人はそれを忘れているように感じています。

Q3:松山氏へ; 「禅」から「食」をどのように捉えて考えていらっしゃいますか?

松山氏)禅の修行の中で「料理は一番大事なもののひとつ」だと言われています。修行では「実践体験」を一番重んじています。いくら立派な知識を持っていてもそれが実際使われていなければ、何の意味も持たない。修行中はいわゆる「勉強」をほとんどしません。それは自分で気が付いたこと、その教えを実際活かしていくこと、そこを重視しているからです。
料理というのは教えを実際に体現するのに一番適した材料です。いただく側も提供する側も教えの表現として食事はあるのだと思います。
禅寺では、食事は静かにいただき、「ながら食べ」をしません。板の間に正座で座り背筋を伸ばして、ただ食べることに集中します。そのような中では本当に味や香り歯ごたえを感じて、味わうことが出来ます。食べることを通して、一つ一つ味わっていく事、それを実践していきます。そこには主従関係はありません。作る者、食べる者一緒なのです。お互いが敬意を払う、だからこそ精進料理なのです。
日本で古来より実践されてきたこと、それが今興味をもたれているように思います。
健康な身体にはやはり健康な心が伴います。その心の部分を何事もおろそかにしているとバランスが悪くなるのではないでしょうか。
精進料理で大事なことは、自分自身が実践することであり、学んだことを活かし自分の心を表現することです。これはきちんと修行を積まないとなかなかできることではありません。ですから、ある程度修行を積んだ者しか料理の担当になれないのです。

退蔵院  副住職松山大耕氏

退蔵院 副住職 松山 大耕氏

退蔵院  副住職松山大耕氏

退蔵院  副住職松山大耕氏

退蔵院  副住職松山大耕氏

退蔵院  副住職松山大耕氏

Q4:髙橋氏へ;「食」から「禅」をどのように捉えて考えていらっしゃいますか?

髙橋氏)禅自体、私自身が捉え切れていませんが、私の仕事は答えがあって答えがないような仕事だと思います。無限に広がる中で、自分がどうするのか、自問自答をいつもしています。そんな中で禅とは相関関係にあるのではないかと思います。
日本人として歩んできたものがあるので、それも大事に育んでいきたいと思います。

Q5:最後にお尋ねいたします。松山さんにとって「禅」とはなんでしょうか?

松山氏)一生かかって頑張らなあかんことです。
お陰様で、老若男女、国籍を問わず、宗教問わず、色々な方々とお会いする機会をいただいて来ています。色々な方々と交われば交わる程、やはり禅について深く考えます。なぜこうなのか、、本質は何だろうか、、考えることにより客観的にもなれますし、やっていく自分の自信にも繋がります。
禅は自分にとって軸であり、これからも一生かけてもっと磨いていくものだと思っています。

プロフィール

松山大耕プロフィール

退蔵院  副住職
1978年京都市生まれ。
埼玉県新座市・平林寺専門道場にて3年半の修行生活を送った後、2006年より退蔵院副住職。
2009年5月、政府観光庁Visit Japan 大使
2011年、日本の禅宗を代表しヴァチカンにて前ローマ教皇に謁見
2014年には世界経済フォーラム(ダボス会議)に出席するなど、
世界を股にかけ、宗教の垣根を越えて活動中。

妙心寺 退蔵院
京都市右京区花園妙心寺町35
075-463-2855
拝観時間 午前9時~午後5時
http://www.taizoin.com/

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